イチロー終戦 兵頭
イチローが昨夜の東京ドームでのマリナーズvs.アスレチック戦で引退した。イチローを生で初めて見たのが2001年のアメリカ同時多発テロが起きた9.11の1週間後のマリナーズの本拠地セーフィコフィールドでだった。
この時の状況はこのブログでも書いたので割愛するが、当時からつい最近まで彼は孤高の人を演じた人だった。そうしなければ、アメリカで勝ち抜き生存出来ないと考えていたのだろう。やっと地の彼の姿が見え始めたのは、ヤンキースからマーリンズへ移った5~6年前からだった。それは彼の成績が落ち始めてから数年後だった。しかし、その時点で押しも押されもしないメジャーのビッグスターの一人となっていた彼はもうミステリアスな虚像を自らに創らなくても周囲から一目置かれる存在になっていた。しかし、真の「イチロー」はそこで終わっていた。
それ以後の彼は野球を真剣に楽しむ姿に変わっていった。この野球少年は常に自分を律しながら時にはおどけてリーダーシップを発揮していった。それは以前のイチローに唯一足りなかったピースだった。
なぜそのピースを加えると戦えなかったか、彼の地でのプレッシャーや差別や圧倒的な体格差は実際戦った彼にしかわからないだろう。周囲(チームメイトをも)を敵とみなして、頑なな姿で防御していた彼は、そのワンピースを加えて、白髪短髪の頭の老兵の外観と合わさって、東京ドームで満場のスタンディングオベーションを受けながら、味方となった相手チームに挨拶をし、味方チームとハグを交わして戦場という遊び場から去っていった。
投稿日:2019/03/22 投稿者:-