人を巡る旅

 長時間の車の運転で高ぶっていた神経と12時間シートに座りっぱなしで強張った筋肉の調子を合わせる為に、帰宅後バイクと荷物を取り合えず車内から降ろした後、一息つく前にスポーツウエアに着替えた私は、いつものジョギングコースを走った。アドレナリンが出っぱなしの神経から指令が行く体はいつもに増して快調で、涼しくなった闇夜の中、所々街頭で照らされている芝地を、いつもより速く走った。

 4日前の早朝、台風14号の列島横断の後を追うように、東進した私は夕方に小雨の降る北軽井沢のキャンピングカーに到着した。隣接するオートキャンプ場のコインシャワーで汗を流した後、近くに住む友人Iと食事に行く。私はいつも彼のボヤキの聞き役になることが多いのだが、彼の先見の明と実行力には一目置いていて、東京時代から40年ほどの付き合いになる。今後も友情は続くだろう。

 最も彼に感謝しなければならないのは、この北軽井沢の地を私に紹介してくれたことである。彼の地元である此の地は彼に言わすと、「冬は寒くてどうしようもない土地」であるが、四国育ちの私にとってはどの季節も新鮮で何時行っても涼しいか寒いかのどちらかで汗をかくことが無く、物音ひとつしない原生林の中、満天の空にはその多さ明るさが桁違いの星々が見られ、何より素晴らしいワインディングロードが至るとことにあるバイク天国でもある。彼と会わなければ、こんな別世界を人生で深く味わえる事は無かったと思う。

 此の地には、しばらく前から知り合いになった初老の別荘族が数家族居る。彼らはゴールデンウイーク前後からここに移住し始め、初雪舞う11月ごろに関東地方の各都県にある温かいご実家に帰られる。私は行く度に彼らから声掛けをしてもらい、必ずN氏ご夫妻宅の広いベランダか庭で軽い食事と酒を頂くのがここ数年の慣習になっている。行く度にその数は増え隣のO氏ご夫妻、今回からもう一ご夫妻増えた。更に、彼らとは又別のお付き合いがある奥さんを亡くされた方もいる。これらの中で最若年の私が言うのも何だが、皆さん孤独と温かみ相反するものを求めていらっしゃるようだ。他愛もないお喋りや庭いじりで余生を悠々自適に送られている。

 到着の翌日は1年間伸び放題になっていた敷地の雑草を、持参した草刈り機で刈ったり、5月から閉めっぱなしだったキャンピングカーの全ての扉を開けて換気したり、I宅へ不動産関連の話に行ったり、近くのお気に入りロードをバイクで流したりと、昨日のドライブの疲れを取ることを優先した。

 到着後2日目は神奈川県に住む従妹夫婦Eの家にお邪魔することにした。車で行くかバイクで行くか迷ったが、混雑が嫌なのでバイクで行くことにした。関越自動車道と圏央道で渋滞もなく3時間ほどで到着した。まず叔父のお墓参りに従妹の車に乗せてもらい、途中で叔母も乗せて行く。久しぶりだったが、叔母もお元気そうだった。

 叔父の墓を従妹の家族と行くのは初めてだったので、叔父も実は大切にしてもらっているんだと感じて、それだけで嬉しい気持ちになる。

 それからが、ビックリの連続だった。従妹のご主人の趣味、一般的には好き嫌いが分かれるだろうが、私は大好きな、異能選手権優勝者の様な趣味である。 家は私が昔、ローマの郊外で見た事のある様な落ち着いた庭、反面室内はビックリ箱かと思うようなアジアン、ヨーロピアン、アメリカンが混ぜ混ぜの異国風。車庫の車は扉が上に跳ね上がる近未来風スーパーカーとビックリするようなモノばかりが待ち受けてました。そう、あのカオス映画「ブレードランナー」のイメージですなこれは。シャワーヘッドからも湯とともに青赤の光が降って来るとは。

 BBQでもてなしてくれた、従妹には大変お世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。k君が身長も成績も上昇しますように。

 今回はバイクを乗り回すために計画したのに、人を巡る旅になりました。みなさん優しく接して下さり感謝しております。ただ、心配な芽が出てきました。世界旅行を考えると2000km走行などアイドリング状態とも言える走行距離で、疲れを癒す発想が出てきたとは、ダメだな。兵頭

 

投稿日:2021/09/24   投稿者:-