赤雷神が来た

 新しいドカッティが来た。モンスター821(赤)である。初めての水冷ドカッティであるが、静かではない。私がドカッティに持っていた理想の感覚に今までで一番近いバイクである。

 それは、低速から高速まで排気音が連続音(ブォーンとか)と成らず、ドカドカドカドカとパルス音が一音一音はっきり聞こえる音質であること。地面を蹴とばす様な加速感、ワイルド感(スムーズであってはいけない)が味わえること。軽いコーナリングマシン(重いツーリングマシンではない)であること。これら今の私の好みが詰まった理想のバイクである。

 私がリターンライダーに成ったのは15年ほど前の40歳代後半であるが、当初は初心者としてヤマハセロー250、訳が分からずリッターバイクに乗りたいという事で、カワサキゼファー1100、ここで私のバイク人生は終わるはずだった。これらは面白味がないのである。私の目にはマイナス面しか映らなかった。

 しかし、起死回生のバイクが現れた。次に購入したBMW850Rである。それは大柄であるが軽く、取り回し易く、トルクフラットで乗りやすい。何より人間中心の設計思想が古いバイクであったが十分感じ取れて、乗るたびに感銘を受けていた。それから2台続けてBMW1200GT、同1600GTLとどんどん大型化していった私のバイク歴。それは850Rの設計思想はそのままに、より快適に、より速く、よりスムーズにという路線であった。その頃はバイクで東京や長野へ1日800km超の走行可能なバイクを求めていたので、それはそれで間違いではなかった。

 しかし、高速道路のバイクでの長距離移動は慣れれば単調で、面白味がだんだんと薄れてきて、私の中でマイナス面が大きくなった。そして同じ単調なら車の方が何かと便利で安全でラクチン(実はこれらの単語はバイク乗りには禁断の麻薬である)であると分かり始めてきて、ここで今までの路線を方向転換したのである。

 長距離移動中心から短中距離のライディングを楽しむ方向に変わったきっかけのバイクはドカッティムルチストラーダ1000s(通称/赤いトウガラシ)であった。このバイクの外見と音量音質の下品さ、その音質の中に聞こえる艶っぽさ、物上質感、走行感の上品さは今まで乗ったどのバイクの延長線上にもなく、孤高の存在で今でも私を飽きさせずに楽しませてくれる。次のドカッティ676はドカッティ初級者用で空冷らしく乾いたドカドカの音質が魅力で、そのクラウチングポジションも慣れれば、峠を責めるにはピッタリである。そして、今回の821である。

 昔の歌に 歌手曲名は忘れたが、 ♬人は 昔 昔 鳥だったかもしれないね、こんなにもこんなにも空が恋しい♬ というのがあった。バイク運転の魅力は、二次元の空を飛ぶ疑似体験のようなもので、その浮遊感にあると私は思っている。その感覚を味わうには、ただ速いだけでは崖の上から本当に浮遊後落下してしまうので、バイクの特性と、自身の技量、道路状況が上手く合致している等のバランスが必要である。自分に合ったいいバイクを良い道路で乗った時は、本当に空を滑空している気持ちになるものである。

 今回の命名はその音とマッチョなボディから「赤雷神」と呼ぶことにする。兵頭

 

 

 

投稿日:2022/06/29   投稿者:-
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