赤いトウガラシこと、ドカッティ「ムルチストラーダ」。英語で言うならマルチストリート、即ち「いろんな道」、と言うことですが、エンジンがやや気難しいのでもっぱら市内の舗装路専用で使っています。それでも、そのすばらしさの一端は味わうことができます。
乗り始めて1.5ケ月ほどですが、意外だったのはこれに乗っていると知っている人にも、初対面の人にも声を掛けられることです。このバイクの前に乗っていたダーク色のBMWはいかにもおっさんバイク系のぼってりスタイルと音(乗ると穏やかで扱いやすい、南ドイツの田舎のおっさん風)には、7年間乗っていて話しかけてくる人は年に数人いるかいないか位でしたが、このドカはすでに10人以上には声を掛けられていると思います。また、その色と音量で振り向く運転者や歩行者は数知れずです。特にハイブリット車や電気自動車が主流になり、エンジン音に限れば徐々に無音化する路上において、時代に逆行する音量には眉をひそめる人もいるのは承知の上で(通りすぎる数秒間我慢してもらって)、内心ではこっそりと痛快感を感じています。
その様な(肯定的な)お一人で、私の行きつけの歯医者の先生がいます。それまで大型バイク免許を取ろうか取るまいか友人に勧められて迷っていらしたらしいのですが、たまたま歯の治療に乗っていった私のドカを見て、「あのバイクは兵頭さんのですか。カッコいいですね。」と一目ぼれされたらしく、2週間後に再診の為又その歯科医院を訪れると、あの言葉は本気だったらしく、「兵頭さん、大型バイクの免許を取りに行きだしました。」「何に乗るのですか?」「ゆくゆくはドカッティに乗りたいですね。」と言われて、私の方がヘぇ~、と驚く様な事もつい最近ありました。不細工だと思っていたスタイルに背中を押される人は私だけではないんだ、と思ったものです。
中々の町の人気者になった感のあるドカですが、爆音に不愉快と感じる方もいるのは確かだと思いますので、極力信号待ちでは手動でエンジンを切り、住宅街の中ではスロットルを開けないように、町の静寂さを壊さない気配りもしながら趣味と実益を兼ねもっぱら不動産業務に使用しております。 S・H兵頭
今年の「代かき」は上流のポンプだかパイプだかを、建築用重機が誤って破損したために、1週間ほど予定より遅れてしまいました。その用水の水を使っている農家は皆、大弱りで未だに代かきが出来ずに乾いたままの田んぼもちらほらしています。実家はと言えば、本来田の中に植えるべき苗が外で大きくなるのでもう待ってはおれず、自前のポンプ2台で横の水路から水を一昼夜かけてくみ上げて、やっとそれが本日終了しました。それにしても、農家も自然現象のみならず、この様な人為的な事故にも左右されるんですね、当然ですが。
今年になって田んぼでのトラクターの作業は5度目、乗り出したのは父の死後からですから12年ほど前からになりますが、結構数は乗っていても中々地元の人みたいには上手にいきません。先日、中学時代の野球部の一年後輩が隣の田んぼをトラクターで混ぜていたので45年ぶりで声を掛けて、ちょっと教えを乞いました。
今年は色々な出来事がありましたが、やっと「田植え」の準備が整いました。後継者問題や米の消費、作付け面積の減少等米の生産者側には良いことは何もないようですが、それでも田植えは農家にとって何か晴れがましい正月のような気になるものです。
PS.表題のブラウンとは当然、土の色の事。農業にとって土作りは一番大事な作業。(素人の私が言うのもなんですが、当然そうだと思います。)今年は初めてトラクターで鳴らした後、すねまで泥水に足を入れて野球で言うトンボを使い細かい起伏をならしました。冷たくてぬるっとした感触が又気持ちのいい朝でした。S・H兵頭
購入後約一か月、一千km乗ったのでその印象を書いておきます。ドッカティ・ムルチストラーダ。全身真っ赤。
ダーク系の色が多いバイク屋、売れ筋は一階に展示しますから、穴狙いでぶらっと二階に上がってみますと、やはりどれもこれもパッとしないツラとスタイルの不人気車が勢ぞろい。その中で唯一真っ赤で不格好なマスクのコイツが目に入ってきました。正面から見ると昔のテレビのウルトラマンに出てきた宇宙怪獣のバルタン星人か〇〇星人に似ているなと思い近づいて値札廻りを見てみますと、あぁムルチストラーダと言う名前なんだ。だいぶ前のバイク雑誌で記事を読んだ記憶がうっすらと蘇りました。こんか顔とスタイルでは売れるわけないわな。デザイナーもデザイナー、それを通す会社も会社。本音を書かないバイクマスコミ。しかし、世間の見る目は正しいよ、と思いながらそうするうちに私の気持ちは固まっていきました。悪球打ちの面目躍如といえるでしょうか。(話はそれますが、昔世間で言うど真ん中のストライクのバイク/カワサキゼファー1100ファイナルエディションの人気カラーを新車で買い、余りの退屈さと乗り手を無視した設計に、早々と売り払いました。人気車ゆえいい値段では売れましたが。)
なぜ、私はこのカワサキゼファーを除きバイク(車も含めて)選びを間違わないのだろうか。このムルチを乗る度にそんな事も考えたりします。(*悪い所も色々目につきはしますが、他車に無い真剣に飛び抜けた所を尊敬を込めて好きになれるからだと思います)
さて、インプレッションですが、一言で申しますと「レッドペッパー」。ドカッテの印象通り、ちょっと気難しく、大胆で、過激。顔スタイルは通好みの愛嬌あるものでも中身は真面目(日本風のではなく)な一級品です。何よりこの手のバイクで最も大事なワクワク感(絶対的加速、その荒々しさ、軽さ、爆音からくる気持ちの高揚感)が素晴らしい。一日千キロはちょっと無理ですが、緩んだ日常に刺激をくれる足として乗っていこうと思います。S・H兵頭
この前、財布を落としたことがあったのだが自分は全く気付いていなかった。
なぜ気付いたかというと、知らない携帯の番号から電話がかかってきて財布を落としている事を教えてくれたのだ。もちろん、財布の中には携帯の番号は入れてなかったのだが、とある病院に問い合わせてくれて電話番号を聞いてくれたらしい。他人の為にそこまでしてくれる人がいるんだな~と思った。
しかも、財布をわざわざ僕のいるところまで財布を持ってきてくれた。お礼をしたいのですがと言うと、たまたま拾っただけなので大丈夫ですと言ってくれて、逆に、財布道の真ん中に落ちてたので、カードとか割れてるかもしれません。大丈夫ですかと言われた。
何十年か生きてきて、良い人ってこの人みたいな人をいうんだなと思った。良い人っていう言葉は本来、抽象的で漠然としているが、こういう人の事をいうんだな~と、自分の中で変に納得し、抽象的だった良い人像が少し具体化した。とても、嬉しい事件だった。
落としても気付かないおじさん